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研究の概要

主な研究対象は,電磁波、アレルギー、異物代謝、ストレスである。研究領域は予防医学としての基礎的研究から,環境医学および産業医学,あるいは生活習慣病の疫学まで幅広い環境医学上の研究スペクトラムを網羅している。研究成果の概要を以下に記す。

アレルギー性疾患における新しい遺伝子の
同定と遺伝と環境の相互作用に関する研究

スギ花粉症についての環境と遺伝に関する疫学調査を実施し、感受性遺伝子としてEosinophil peroxidase (EPO)の遺伝子を初めて発見した。また、Interleukin 4 receptor A(IL4RA)などの遺伝子の多型と花粉症発症の関係がスギ花粉暴露量を混絡因子として存在するとする疫学モデルを提唱したところである。好酸球の機能異常は、喘息やアトピー性皮膚炎などの他のアレルギーと共通しているため、いわゆる「アレルギー体質」の本質がEPO、CCR2, CCR3を中心とした好酸球関連の遺伝子多型にあると推定されるため、他のアレルギーとの関連で、感受性遺伝子を同定する研究をすすめている。これらの解明から、予防がどれだけ有用かを知り、個人ごとの予防法を導入するといったテーラーメードの予防法を実践に移すことを目標としている。

産業保健、地域保健、母子保健上における
諸ストレスの評価法と新しい指標の開発

近年の労働衛生上の重要な課題はストレス対策である。これを正しく評価するために、これまで Sense of coherence (SOC)とNatural killer cell activityなどの細胞性免疫との関連を示してきた。これらが、喫煙行動や、健康教育による運動習慣改善などに極めて有効な指標であることも示すことができた。従来の職場ストレスの評価法、例えば、KarasekのJob Content Questionnaireによる職場ストレスなどとの比較を通して、より有効な健康教育のためのストレス指標を開発する必要がある。また、学童期児童あるいは妊産婦のストレスを正しく評価することによって、学校、職場、生活環境における公衆衛生、労働衛生、母性衛生の向上につなげる研究もすすめている。

喘息発症と酸化ストレス

喘息の発症機構を把握し、予防することを目的とする。ハウスダストや花粉などがアレルゲンとなり、喘息は発症する。また、ディーゼル排出物や黄砂に付着した化学物質が、喘息の憎悪因子として働く。一方、喘息で重要な役割を果たしている好酸球は、酸化ストレスの要因でもあり、酸化ストレスがどのように喘息に関わっているか興味深い。喘息モデルマウスを用いて、肺胞への好酸球の浸潤や気道過敏性の亢進などの喘息症状と、抗酸化物質や脂質酸化物などの酸化ストレスマーカーを指標とし、喘息発症と酸化ストレスの関わりについて検討している。

脂質酸化物による細胞内情報伝達異常と疾患

ジアシルグリセロールは、細胞内情報伝達に重要な役割を果たしているプロテインキナーゼC(PKC)の活性化因子として働く。ジアシルグリセロ−ルが酸化されると、PKC活性化能が高くなることを明らかにした。酸化ストレスは種々の疾病に関与していると考えられており、ジアシルグリセロール過酸化物による異常シグナルがその機構の一つであるかもしれない。

「高齢者の健康被害に関する調査研究」

高齢者は地震により心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神的影響を受け易いと言われている。能登は高齢者が多い地域であり、能登半島地震による高齢者の健康被害が懸念された。仮設住宅で暮らす高齢者を対象とした疫学調査から、地震による精神的健康影響からの回復や予防には、周囲との交流や支援が大切であることが示唆された。今後も継続調査を行い、地震による高齢者の長期的な健康被害、および、その要因について把握し、能登半島地震の被災高齢者に、また、今後の災害時に、必要な支援と予防法について検討する。


「小児期からの栄養および環境・生活習慣に起因する疾病予防と、効果的な健康教育手法の開発」

日本人の三大死因である悪性新生物、心疾患、脳血管疾患を始めとする生活習慣病や栄養の過不足に関連した疾患の一次予防を図るためには、小児期からの適正な栄養摂取と正しい生活習慣に留意する必要がある。また、近年増加傾向にあるアレルギー疾患は、小児期における重要な健康課題であり、ストレスや子どもの「こころ」の問題とも密接に関連している事が知られている。本研究では、子どもの「栄養摂取状態」、「生活習慣」、「環境因子」等、健康問題に関する諸要因が子どもの健康に与える影響を明らかにし、疾患発症予防のための健康教育手法を構築する事を目的とする。研究成果は、効果的な食育に繋がるだけでなく公衆衛生の向上にも貢献するものとして、現在、満3歳から小学校就学前の幼児を対象とした疫学調査を進めている。


「寝たきり予防のための三世代参加型健診・
健康教育モデル事業」

高知県佐賀町において、運動機能制御学教室と共に三世代参加モデル健診事業に取り組んでいます。 本事業は、健診と健康教育に三世代が参加することで、高齢者の寝たきりを予防するのと同時に、年少者の情操教育さらには将来の生活習慣病を予防するための健康教育を実施するまったく新しい試みです。詳しくは、Wordファイル(216KB)をご覧下さい。