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教授より挨拶

中村裕之教授

中村教授

21世紀は「環境の時代」というのを聞いたことがあるとは思います。昨今の環境問題は、これまでにない様々な複雑な様相を呈してきました。その中心は、文明の発展とともに生じた副産物による人為環境、特に大気汚染から端を発した地球温暖化の問題、水質、土壌を汚染してきた化学物資、特に環境ホルモンによる生体影響、電磁波などの目に見えない通信環境による不安、近年のアレルギーの増加をもたしている新しいアレルゲンの出現などです。これらを解決する間に、新たな環境問題が出現するといった具合です。私たちの環境医学教室では、これらの新時代の環境問題を中心に、環境と生体の関わりを解明し、その健康に与える影響を改善する方策を考案し、社会的に応用できる対策を立てることを目標としております。

このように環境問題は、特定の領域ではなく、全人的な角度から学問を展開する必要があります。その意味では社会医学といえるでしょう。医学や生物学、生化学に加え、環境学、社会学、心理学、統計学などの多くの学際領域、さらには、人類に貢献できるための生命倫理や宗教観をも包括的、統合的に駆使しなければなりません。その目的のため、従来の疫学や生理学的病理学的技法から、最新の分子生物学的あるいは遺伝子学的技法を取り入れ、環境による生体影響をマクロからミクロの視点で研究する必要があります。

さらに、環境医学とは、予防医学という大きい特徴を兼ね備えております。私は、2007年1月に本教室に着任しましたが、環境医学が最も貢献できる道は予防医学であることを強調していくつもりです。従来では、国の環境基準や諸政策などによって健康が守られてきたでしょうが、さらには、個人個人にとって有害な環境の影響をさらに少なくするためには、個人ごとに違う緻密な予防法が開発されるのが理想的です。この個人ごとの予防法とは、従来では、体型ごとにおおざっぱに既製服が作られるという既製服型予防法であったのに対して、個人の体型に合わせて予防法をつくるという意味でテーラーメード予防といわれています。これが実施されれば、さらに快適なを地球環境となるでしょう。このように予防法が個人ごとに異なるのは、各人の遺伝子がそれぞれ異なるからです。ある遺伝子にはとりわけ都合の悪い環境因子が存在するのです。それを遺伝と環境との相互作用といいい、今後ますます研究する必要がある領域です。この研究領域を今後、発展させてゆき、テーラーメード予防医学としての環境医学をすすめたいと考えております。

環境の時代の到来により、環境医学の役割は、益々、重要となります。教室員一同、日々、質の高い研究、充実した教育、社会的な貢献に邁進していく所存です。